こんにちは。千葉県歯科医師会の新井です。

 「摂食・嚥下」ってことばをご存知ですか?人は皆、食事の時に食べ物をお口に入れて“もぐもぐ”してから“ごっくん”と飲みこみます。簡単に言えば、この“もぐもぐ”が摂食(せっしょく)、“ごっくん”が嚥下(えんげ)にあたります。目で見て唇、舌などで触れてどんな食べ物か硬さや大きさを感じ取り、“もぐもぐ”と歯でちぎって、噛み砕いて、すり潰して、舌などを上手く使って唾液と混ぜて飲みこみやすくしてから喉の奥に運んで“ごっくん”と飲みこみます。

 若くて健康な人たちは当たり前のようにやっていることでも、お年寄りや障がいのある方には難しい場合もあります。舌や唇、頬を動かしたり口を開け閉めするための筋肉が弱っていたり、咬むための歯がむし歯や歯周病に罹っていたり抜けたままになっていたり、唾液が十分に出ていなくてお口の中がカラカラに乾いていたり…これが“もぐもぐ・ごっくん”を難しくしてしまいます。

 さらに、上手く飲み込めないと食べ物が唾液と一緒に肺に流れ込んでしまいます。これを誤嚥(ごえん)といいますが、唾液中にはばい菌が混ざっていますから、これが悪さをして肺炎になってしまうこともあります。これが誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)という病気です。

 介護が必要になった方たちに一番楽しいことは何ですかと聞くと、お食事が何よりも楽しみだというお話をよく耳にします。チューブを通じてのお食事ではお腹は膨れても満足感はなかなか得られません。そこで歯科医師がお口の中を検査して、摂食・嚥下に必要な機能の回復を図ります。そこからは歯科衛生士さんの出番です。お口の中をきれいに掃除して、その良い状態が長く続くようにさまざまな口腔衛生指導を行います。さらに患者さんがお口の周りの筋肉を上手く使えるように“もぐもぐ・ごっくん”の練習をします。食べ物の大きさや硬さを調整したり、とろみをつけたりして、食べやすく、飲み込みやすく工夫することも大切です。

 お食事は彩りや香り、味や食感を楽しみたいものです。そこに家族や親しい人との楽しい会話が加われば、こんな幸せなことはありません。しかめっ面だったお年寄りが、自分のお口からお食事が取れるようになると素敵な笑顔を見せてくれるようになります。きっとそれが長生きにつながることでしょう。歯科衛生士さんはこんなお手伝いもできちゃうんです。

 

食べやすいように工夫された食品

食べやすいように工夫された食品

IMGP2071

彩りが良いと美味しそうですよね。